日本政策投資銀行 世界最大級の英バイオマス発電に融資へ
日付:
2016-11-15
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すべての国が温暖化対策に取り組むことを定めたパリ協定が発効し、再生可能エネルギー活用の重要性が増すなか、政府系金融機関の日本政策投資銀行は、生物に由来する資源を使うバイオマス発電で世界最大級となるイギリスの事業に融資する方針を固め、ノウハウを吸収することで、日本での普及を後押ししたい考えです。
関係者によりますと、日本政策投資銀行は、ヨーロッパや日本の複数の銀行とともにイギリス中部ミドルズブラ近郊に建設が予定されているバイオマス発電所の事業に対する融資に乗り出すことになりました。事業から得られる収益を返済の原資とする「プロジェクト・ファイナンス」と呼ばれる方法で行われ、日本政策投資銀行の融資額は、日本円で数十億円にのぼると見られます。
この発電所の発電量は30万キロワットと、バイオマス発電所としては世界最大級で、2020年にも稼働し、周辺の60万世帯の電力を賄う計画です。
木材や家畜の排せつ物など生物に由来する資源を使うバイオマス発電は、太陽光や風力に比べて安定的に電力を供給できるうえ間伐材を活用することで林業の再生などの効果も見込まれていて、日本でも拡大が期待されています。
日本政策投資銀行は、このほか洋上風力発電や太陽光発電に融資を行っていて、バイオマス発電の事業運営のノウハウも吸収することで日本での再生可能エネルギーの普及を後押ししたい考えです。
融資の狙い
今回、日本政策投資銀行が乗り出す「プロジェクト・ファイナンス」は事業から得られる収益が返済の原資となるため対象となる事業が安定的に収益を生み出す必要があります。このためほかの再生可能エネルギー事業に比べて燃料を確保しにくいバイオマス発電事業への融資は難しいとされています。
イギリスのバイオマス発電所では、森林資源が豊富な北米から木材を輸入して、燃料を確保する計画です。日本政策投資銀行としては、今回の融資を通じ、日本で課題となっている燃料の確保など、事業が安定して収益を生み出すためのノウハウを吸収し、日本でもバイオマス発電事業を対象にしたプロジェクト・ファイナンスを根づかせて普及を後押したい考えです。
バイオマス事業 日本では
バイオマス発電は、木材や稲わら、それに家畜の排せつ物など生物に由来する資源を燃やしたり、ガスに変えたりして発電するもので、再生可能エネルギーの中でも今後、特に拡大が見込まれています。
政府は、2013年度には発電量の10%余りだった再生可能エネルギーを2030年度に「22%から24%」へと2倍以上に増やす目標を掲げていてこれにともなってバイオマス発電は最大で今の発電量の3倍近くに拡大するとしています。
この背景には太陽光発電をめぐって一定の価格で電力会社が購入することを定めた固定価格買い取り制度の価格が引き下げられたことから、それ以外のエネルギーへの関心が高まっていることなどがあります。
とりわけバイオマス発電は、間伐材を燃料に使えることから政府は林業の再生や、地域振興などの効果もあるとして買い取り価格を高く設定しています。さらに太陽光や風力とは異なり、天候に左右されることがなく、安定して電力を供給できるメリットもあります。
ただ、バイオマス発電が拡大すれば、燃料を国内だけではまかなえず海外から輸入する必要もあるとされていて、資源を長期にわたっていかに安定して調達できるかが課題となっています。