ジカ熱やデング熱など、蚊を媒介する感染症への対策が課題となっているシンガポールでは、人工的に繁殖能力を失わせた蚊を自然界に放出する実験が新たに始まりました。
シンガポールで18日から始まった実験は、ヒトを刺さないオスの蚊を、「ボルバキア」と呼ばれる特殊な細菌に感染させることで繁殖能力を失わせたうえで、自然界に放すものです。
実験は国内の3か所で行われ、このうちシンガポール中部の住宅街では、およそ3000匹の蚊が一斉に放出されました。シンガポール政府は、放された蚊が生息する場所や範囲について今後半年かけてデータを収集し、その後シンガポール全土で蚊を放出する計画です。
赤道直下のシンガポールでは、ことし8月にジカ熱の集団感染が発生し、感染者は400人を超えたほか、デング熱の感染者もことし1万人を超えるなど、蚊が媒介する感染症への対策が課題となっています。シンガポール環境保健研究所のヌン・リー・チン所長は「ボルバキアに感染した蚊の放出を続けることで、蚊の個体数を減らすことができる」と話しています。
同じような実験はオーストラリアやブラジルなどでも行われ、一定の効果が確認されているということで、シンガポールでも新たな感染症対策として期待されています。