【ロンドン=岡部伸】英国の中央銀行、イングランド銀行(BOE)は4日、大規模な金融緩和策を決めたと発表した。主要政策金利を年0・50%から過去最低の年0・25%に引き下げた。利下げは7年5カ月ぶり。また国債などの資産を購入し、市中に資金を供給する量的緩和も9月に再開すると表明した。国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択したことに伴う景気減速に対応し、世界経済の失速を阻止する強い意志を示した。利下げは即日実施した。主要金利は、リーマン・ショックによる景気の冷え込みを受けて利下げした2009年3月から変更していなかった。量的緩和は金融機関を除くポンド建ての社債を購入対象に加え、1年半で最大100億ポンド(約1兆3千億円)を買い取る。国債は半年間で600億ポンド(約8兆円)購入する。購入枠は12年7月以降3750億ポンド(約50兆円)を維持していた。大規模な金融緩和による銀行の収益圧迫を和らげるため、BOEは民間銀行に対し、最大で1千億ポンド(約13兆3千億円)の低利融資を始めることも発表した。
大規模な金融緩和を決めた理由についてカーニー総裁は記者会見で、EU離脱選択による「不確実性を減らし、景気減速を和らげるためだ」と説明した。その上で「大規模な金融緩和を行っても、EU離脱決定の打撃は残る」とも述べた。BOEは同日、17年の英国の経済成長率予想を2・3%から0・8%に下方修正した。消費者物価上昇率見通しは2年後に2・1%と見込んでいたが、通貨ポンドの下落による輸入価格上昇で2・4%に引き上げた。BOEの緩和決定を受け、英通貨ポンドは対ドルで一時、前日比約1・7%下落した。