欧州の銀行を対象とした健全性審査(ストレステスト)で、大手行は景気が悪くなっても健全性を保つ規制上の最低基準を上回るとの結果が出た。ただ、一部の銀行で資本増強が必要になるとの見方も出て、1日の欧州株式市場では先行き警戒感から銀行株の売りが広がった。 欧州銀行監督機構(EBA)が7月29日に発表したストレステストでは、通常と景気悪化のシナリオで、普通株を中心とした中核的自己資本比率が対象51行でどれぐらい下がるかなどを試算した。比率が下がれば各国の金融当局が経営改善を促す措置を取る。悪化シナリオでは、イタリア3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行で2015年末の12・01%からマイナス2・23%になり、資本不足に陥る可能性が出た。EBAは自己資本比率の合否ラインを設けていないが、市場は前回14年のテストで採用された自己資本比率5・5%以上が目安とみる。下回ったのはモンテ・パスキのみだ。
一方、大手銀は国際規制が求める7%以上の最低基準を軒並み超えた。これを好感し、1日の欧州株式市場で主な銀行株は値上がりで始まった。ところが一部は資本増強が必要になるとの見方が出て、次第に売りが広がった。ロイター通信によると、前週末終値比で9%超下がったイタリアのウニクレディト株は一時、取引停止になった。抱える資産の大きさも意識された。銀行規制に詳しい大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストは「銀行はリスクを下げるため、国際規制で不要な資産を減らすよう求められている。それが追いついていないことが警戒された」と指摘する。資産売却を進めると、銀行の収益力が落ちる可能性があることも株価を押し下げた要因とみられる。